Pretty(プリティ)作品解説
2014.03.06 [No Comments]
Pretty(プリティ)1985 8ミリ 98分
Prettyに関しては以前別の日記にも書いてますので
こちらと合わせて読んで頂けるとわかりやすいかと思います。
Prettyの思い出
《物語》
この映画の世界は大きくふたつに分かれている。
ひとつは田舎
田舎では動物も人間も分け隔てなく会話もでき
みんな平和にのんびり暮らしている。
もうひとつは街
街では映画づくりをしてるだけ、役者はスターを、スタッフは監督を、
目指して必死に生きている。
そんな世界で田舎から映画をつくりたくて街に出ていく純情少年 新ちゃんと
その新ちゃん恋して後を追うピアノの大好きな少女運子(うんこ)ちゃんの
ふたりに降りかかる物語です。
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★オープニングでは運子ちゃんが不慣れな化粧をしているところに
草をかみかみしながら牛さんがやってきます。
そして運子が『おらぁ~街さいくんだぁ~街に行ってピアニストになるんだぁ』と宣言します。
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★一方街では、超大作のクランクインの記念式典で沸き立っています。
今回ヒロインに抜擢されたソフィアも嬉しそうです。
そして記念撮影の時、大監督が心臓発作で急死してしまいます。
街は大混乱状態になってしまうのです。
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★運子が街に行ってしまうと知って、動物達は泣き叫んで止めますが
運子ちゃんは振り切って
『ちからおっぱい』がんばるぞ~と歌いながら旅に出ます。
旅立つ運子の後姿をみて神父が坊主が占い師が変なやからがいっぱい出てきて
『あの娘はきっと~スターになる~』と叫びながら風に飛ばされていきます。
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★街では大プロデューサーが監督の急死に伴い、新監督に白羽の矢をたてます。
彼の抜てきにより、映画は一から準備し直し、ヒロインも選び直す事になってゆきます。
そして、街では新たなヒロインを求めてスカウトマン達が動き始めます。
その中には、今は落ちぶれてしまった老スカウトマンの姿も見えます。
そして名脚本家オールドセラーさんお手伝いさんが行方不明になったダンナ様を探してます。
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★街に向かう運子は途中で『川止め』にあって立ち往生します。
河原では街を目指す若者達が不満をたらたら騒いでいます。
川越人夫の長老が『大雨が降るから駄目じゃと叫んでいます!』
でも現時点では晴天なので納得のいかない若者達や運子は長老を責め立てます。
苛められて困った長老が『ばぁさんや~』と天に召されたばぁさんに助けを求めるように
天を仰ぐと、突然豪雨が振り出します。
若者達は逃げ惑い、川越人夫達は
『アメアメフレフレ~』と歌いだし、狂喜乱舞します。
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★逃げ惑う、運子は傘をさしてくれたやさしいシルクハットのおじさんと出会います。
彼はスランプに悩む脚本家、オールドセラーさんでした。
セラーさんは運子の奏でるピアノの音色にインスピレーションを得て、突然シナリオを書き始めます。
驚いて見てる運子、そこに突風が吹いて、村の動物達からもらった大切な帽子が飛ばされます。
川の中まで帽子を追いかけた、運子は川の流れに飲まれてしまいます。
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★新ちゃんはと言うと、運子に見送られて、映画づくりを目指して、街に向かってる途中
狼男に噛まれてしまいます。
そして、一日1000回笑わないと狼に、シラケさせても狼になる呪いにかかってしまうのでした。
この後川で溺れた運子は記憶を失って、エキストラばかりで長年役に就けなくて狂ってしまってる女優のABC三姉妹に助けられ、奴隷のようにこき使われています。
そんな生活になんとなく違和感を持ってる、運子は洗濯物やシャボン玉を
相手に違和感を訴えて、歌って踊ります。
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★その姿を見ている老スカウトマンとイコール
そして、老スカウトマンに復活してほしい、イコールの策略の元、
運子は女優へと育てられて
いくのですが、その育成チームの中に、シナリオを貶されて
映画作りをあきらめて、失望した新ちゃんが偶然加わります。
運子はあんなに好きだった新ちゃんの事さえ思い出せないでいるのです。
新ちゃんは、そんな運子の力になろうと頑張ることにしますが、自分が挫折した
悲しみを棄て切れません、でも笑い続けないと狼になってしまう新ちゃんは
カウンターで数えながら、1日1000回笑い続けるのでした。
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★そして新ヒロインへの戦いを、偶然再会したピアノの演奏によって勝ち抜いた運子!
いよいよクランクインの日、スタッフ&キャスト皆で前監督のお墓参りにするのですが
運子のピアノの力なのか、墓の中の監督が甦ります。
街は再び混乱状態に。。。混乱の中、運子は気を失ってしまいます。
そしてその混乱に嫌気がさした、新ちゃんは自らシラケるギャグを言って狼男に変身してしまいます。そして運子を連れ去って街から去ってゆくのでした。。。
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★草原で目を覚ました、運子はなぜ、こんな場所にいるのか、何故自分がドレスを着てるのか
さっぱりわかりませんが、傍らには、運子に寄り添う白い犬がいます。
犬の首には新ちゃんがいつも身に付けてた笑いを数えるカウンターがぶらさがってます。
気を取り直した、運子は再び新ちゃんを追いかけて待ちに向かって歩いてゆくのでした。
Pretty プリティ その1 (全8-1)
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★解説
この映画は自主映画(素人映画)と言うのはなんぞや!
と言う事にちょっとこだわって作りました。
元々は、ただ作りたいから作っただけで、それをきっかけにどうしたいとか、それが文化的にどんな
位置を占めるかなんて事にはまるで興味がなかったのですが、高校生の時に作った映画
が賞をもらってしまったが為に色んな方々、特に映画評論家さんや映像作家の人達に感想を頂く
機会が増えてしまって
8ミリ映画でこんな物を作っても意味がないのではとか、個人映画とは、などなど色々聞かされました。色々言われても
まぁ自分は作りたい時に作りたいものを撮るだけじゃわいと考えていたのですが。。
『夢来』の製作に3年もかかってしまったことで、色んな方々に迷惑をかけてしまい
そこまで苦労して作る意味を考えないで、次の作品には中々入れなくなってしまい、
色々まじめに考えるようになりました。
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そこで制作的に色々自分なりのルールを設けることにしました。
●ギャラを払ってないのだから、上映時も入場料は取らない。
●最低でも交通費は支払う(これが後に大変な負担になります。)
●なるべく多くの人に観てもらえる様に上映会は頻繁に行う。(1年間は月に最低でも1回)
●希望条件が整わなくてもその日できた状態で撮影は決行する。
(たとえばエキストラ200人ほしいと希望して50人しか集まらなくても、その事がマイナスに作用しないように考えて撮ったり、役者さんが急遽来れなくなっても撮り方で対応したりすると言った事です。実例としてはどうしてもキャストのスケジュールが合わないときは、その人の顔が時々変わる
と言う設定にして別の人に演じてもらったりしました。)
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内容的にこだわった事は
●多人数によるパワーを全編に感じさせたいので、1カットに写ってるのは20人以上にする
(これは守れませんでした)
●音楽は全編オリジナル(パートミュージカル)
●現場でのキャスト&スタッフにかかるストレスを少なくするテンポで撮影をこなす。
これは役者さんは皆素人なので、ネバレバ良い物が出てくる訳でも無いので
芝居しやすい環境や雰囲気を作って、バンバン撮っていこうと思いました。
今までは8ミリなのに絵に対するこだわりが強く、光線の状態が良くなるまで太陽や雲を待ったり
して現場のリズムより絵の完成度の高さを求めたりしたのですが、素人映画の場合必ずしも
それがプラスにならず、逆に待ってる間に役者さんのテンションが下がることなども多いと
感じていたので、今回はノリを大切にして進めて行く事を大切にしました。
●芝居はなるべく大芝居でやることにする。
(これも素人役者の場合細かな表情の変化や表現を求めても、できる人が少ないので
わかりやすい大芝居が浮かないトーンで映画全体を固めてしまえば素人の学芸会芝居が良く作用するとの考えからです。)
とにかく明るく楽しい撮影現場を目指して進行していきました。
妥協することはマイナスに作用しないように撮影現場で知恵をしぼる事、それを楽しみにして
た感じもありました。
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そもそも完成したシナリオをがすでにかなり妥協していたので、妥協することに対する
気持ち悪さはなかったように思います。
★記憶にあるシナリオの妥協してやめたシーン★
●オープニングに大名行列の様な撮影隊の一行が道を埋め尽くして行進してる
(イメージでは500人規模でそれぞれの衣装も凝ってる)
●映画製作に挫折した新ちゃんを慕うように、街じゅうのペンがインクをジェット噴射のように
吹き散らしながら新ちゃんの元に集まってくるシーン
その時飛び散るインクが新ちゃんを悲しませた街の人々を染めていく。
特に主演に選ばれた運子の純白のドレスがいろんな色で染まっていくのなど。。
●自分の体重が支えきれないほど太ってる大プロデュサーが、普通に歩くために、大きな
風船などで自分の体を支えているが興奮した時に風船を割ってしまって地中に埋まっていき
その場所に綺麗な花が開花する。
●うれない役者達が果実のようにぶら下がってる大樹があり、みんなが恨み言をぶつぶつ
呟いている。
などなど、どのように撮影したら良いか具体的に思いつかなかったり、人数が集めきれない
ないので、あきらめたシーンが多くありました。
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★撮影現場のスタッフ編成
現場のスタッフ編成もプロの現場のまねをするのではなく、素人には素人にあった
やり方があるのでは無いかと考えてたので、撮影5人組、制作5人組と分けて
それ以上の細かい仕事分けはしないで、臨機応変に現場でやれることを皆でやると決めて
おりました。
カメラマンは今回は監督に専念して自分ではやらないでと考えてたのですが、ほとんどがアドリブで進行していた現場なので、自分がカメラ持って走り回ってないと成り立たなくなってしまい、
撮影2日目ぐらいからは自分で廻しておりました。
カメラマンをお願いした、北村さんには申し訳ない事をしたと思っております。
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★キャスト
この映画は出演者が多いので、映画に参加してくれる人を集めるのに1年ぐらいかけました。
自分の作品がかかる上映会や他の上映会に出向いてチラシをまいたり。
『みるぷり』と言う新聞を発行したり『きくぷり』と言うラジオ番組のようなテープを作って
配ったりして仲間を増やしていきました。
そして映画を観て、この人おもしろいと思った人にすぐに会いに行っては
出演交渉して決めていきました。
ゆえに出演してくださった皆さんは、
自分がファンになった方ばかりで構成されております。
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★主演の運子ちゃんを演じてくれた今井依子さんは
女子高生の時に8ミリ映画を作ってる自分に
一度話がしてみたいと会いに来てくれた女の子です。
独特なキュートな雰囲気が魅力的なお嬢さんで、
いつか何か一緒に作りましょうと約束してたのですが
自分は『夢来』の制作に追われてたので結局2年後ぐらいに
自分がカメラマンと主演を引き受けた
『パッチンパインズ』(巽省吾監督)
と言う作品で彼女を監督に紹介し
ヒロインを演じてもらう事になり、初めて一緒に作品を作る事になりました。
この時にカメラマンとして彼女の作るキュートな表情や芝居にかなり惚れ込んでいたのですが
『パッチンパインズ』の撮影の終わりに
『今度は増井さんの監督する映画に出てみたいと』
と嬉しいお言葉をもらい、彼女をイメージしながら運子ちゃんを作り上げていきました。
自分の為に作られた役がおてもやんみたいな化粧をした女の子でしかも名前がウンコちゃん
だったので、今井さんはかなり戸惑いもあったようです。
今井さんは音楽にも才能のある方で、運子ちゃんが歌う曲やピアノ曲は
全部彼女の作曲&演奏です。
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★新ちゃん役の湯本ひろゆきさんは
『ハートじかけのオレンジ』(牛山真一監督)で笑いまくる役柄が凄く面白かったので
同じように、笑いまくるキャラを演じてもらいたいと思って、新ちゃんの役を書き上げて出演を
お願いしました。
春休みの間だけで出演を済ます予定が、結局夏休みも東京から来てもらう事になってしまい(ロケ場所は京都、大阪)、申し訳なかったですが、現場を常に盛り上げてくださる湯本さんのおかげで、完成した映画の雰囲気もとても良いものになりました。
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★ダンナ役の常塚彩子さんは初めて
自分がスタッフ&キャスト募集を雑誌でした時に(夢来の時)
一番最初に応募してきてくれた女の子でそれ以後、
自分の関る映画でスタッフとして
大活躍してくれてたのですが、他の監督さんの映画で好演されてるのを見て、
役者さんとしても魅力があることに気づいて、
今回初老のスカウトマンと言う難しい役柄をお願いしたのですが
思ってた以上に素敵な役にしてもらえました。
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★ソフィア役の住野真子さんはプロデューサーの小澤くんの紹介で
会ったのですが、独特の雰囲気が面白いのでソフィアと言うちょっとやりにくい
役をお願いしました。
彼女の魅力を出し切れなかったとの思いがあったので、この次の作品では
彼女主演で春夏秋冬に一本づつ4人の監督で恋がテーマにしたムニバス映画
『ひととしっく』
を撮る事になります。
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★キッド役の島崎俊樹くんは自分の映画には欠かせない役者さんで
『王将餃子edムービー』主演コロナ
『夢来』オカマの三田
など重要な役を演じてもらってます。
彼の監督作品では自分が撮影を担当するなどいちいち話し合わなくても
気持ちの通じる映画仲間です。
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★ゴンベー役の小澤裕之くんは、この映画のプロデューサーでもあり
監督としてもとてもユニークな作品を撮ってる映像作家さんです。
そのキャラクターにほれ込んで出演してもらいましたが、プロデューサとして
自分にかなり振り回されたので、大変だったと思います。
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★イコール役の田中健三くんは『トイレットペーパーを食べた男2』の怪演が好きで
お願いして出ていただきました。独特の台詞回しは味わいがあってすごく良かったです。
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その他、多くの方に出演して頂きましたが、自分の好きなキャラクターの人ばかりが
に出演してもらったので、監督としてはどのシーンも楽しんで撮れました。
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★スタッフ
スタッフもキャストと同時にチラシや雑誌募集などで出あった、多くの人に参加してもらいました。
当時の自主映画でギャラが出る事はほとんどなかったのですが、自分がお世話になった
方が映画を作る時は働いて返すみたいな流れがありました。
自分はPrettyの撮影までに『ノンタイトル映画』『パッチンパインズ』『夢で逢いましょう』など
8ミリ映画にしては大きな規模の作品のスタッフやキャストをやってきたので、これらの作品で知り合った多くの人が参加してくださり、助けてもらえました。
ある意味ここまでやってきた自主映画の集大成みたいな映画になりました。
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★感想や評価
作品の感想ですが、面白いとか凄いとか言ってもらえる反面、ストーリーがよくわからなかった
と言う感想も多かったです。
自分としては当初考えていたより、かなりわかりやすい映画にしてしまったと反省してる部分も
あったぐらいなのに、これでわかりにくいのかぁとちょっと驚いたのですが
2回観てくれた方々の感想がことごとく良く、こんな話だったのかと泣けましたなど
好意的な感想ばかりなので、自分の語り口は不親切なのかもしれないと言う考えが染みこんで
しまいました。
面白いのは演劇関係の方々は一回観ただけで内容を把握して面白がってくれる方が
多かった事です。
空間はどこでも良い、気分と芝居をつなげれば良いと言う演出プランが演劇の方の
考え方と合っていたのかもしれません。
こんな変な映画を好きに撮らせてくれたスタッフ&キャストの皆さんには、今でも深く
感謝しております。
ありがとうございました!