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k-masui.comのブログ記事

夢来(ユキ) 作品解説

2014.01.28  [No Comments]

★『夢来』(ユキ)

1981年 8ミリ カラー  90分

★概要

『私は。。ゆき 夢がくるって書くの。。私、夢を探して旅してるの』
そんな台詞をやたらに言う可愛い家出人の女の子が色んな変な人と出会って
ゆく物語です。

毎日徹マンばかりしてる4人組の大学生が、夜明けの道を歩いてよからぬ
相談をしている所から映画は始まります。

街の雑踏の中、ひとりのオカマが日傘を片手に街をねり歩いてます。
そのオカマの後をつけている美少女。

少女は何か面白いこ事があるとすぐに気持ちのままに行動してしまう夢来(ゆき)ちゃん
今回は派手なオカマに興味を持ってあとをつけて歩いてます。

その時、突然の強雨に降られた夢来ちゃんはオカマのお家にお邪魔することになります。
そこで初めて彼女が『夢を求めて旅してるの!』とか平気で語る、
楽しげな少女だとわかります。(実際彼女は家出して旅している)

オカマは仲間のオカマ達を呼んで楽しいお茶会を始めます。
そこで夢来はチーズケーキに仕込まれた睡眠薬によって眠らされてしまいます。

オカマ達は実は夜明けの道でよからぬ相談をしていた大学生達でした。
毎日の麻雀にも飽きた彼らは、街をオカマの格好をして練り歩き、無防備に近づいて
来る女の子を部屋に連れ込み、いたずらしようとたくらんでいたのです。
彼らも実際にこんな事で女の子が釣れるとは思ってなかったので、うまくいって
事のほか興奮してます。
誰から夢来ちゃんにいたずらするか揉めた後、じゃんけんで順番を決める事にします。

そして1番を獲得した学生がいざ夢来ちゃんにいたずらしようとしたその時、謎の典型的な
探偵スタイル(トレンチコートに帽子に銜え煙草)の男が部屋に乱入してきて彼らをぼこぼこ
に殴り倒してしまいます。
その時オカマに扮装していたひとり三田が強く頭を打っておかしくなります。
そして、その強烈なパンチをくらわした探偵の男立(おだて)に惚れ込んでしまいます。
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騒ぎにも気づかず眠ったままの夢来を男立は背負って連れ去ろうとしますが
怒り狂ったオカマのボスに包丁で攻撃され、その戦いの最中に目を覚ました夢来は
事情がわからず逃げ出してしまいます。

再び街中をおもしろい事を求めて歩き回ってる夢来、その後を謎の探偵男立がつけています。
そこに街中の人全部が振り向いてしまうほどの大声をあげて、オカマの三田が走りよって
来ます。頭を打ってから自分は女だと思い込んだ三田は惚れた男立を捜し求めて
やっとみつけたようです。
変な探偵につけられてる事に気づいて夢来はまた逃げ出しますが、その道中また
変な8ミリカメラを持った青年に出会い、家出人の集まった不思議な公園に案内されます。
その公園で夢来は『夢を求めて旅してる!』と叫んで他の家出人たちに大笑いされて
またまた逃げ出してしまいます。

誰にも理解してもらえない彼女は悩みながらも街をさまよいます。
そこで、今度は海賊になると叫んでる変な男、余島(よのしま)に出会います。
彼は一緒に海賊になる船出をしようと友人を誘いますが馬鹿にされて喧嘩したばかりなので
突然現れた、海賊になると言う彼の夢に喜んで賛同してくれる夢来に有頂天になります。
ふたりは意気投合して一緒に船出することにします。

しかし、余島の船出の舟はいつも自転車にくくりつけて運んでた、ゴムボートでした。
それで、川から海に出ようと言うのです。
でも夢来は他の友達たちと違って
落胆することなくどうせなら綺麗に飾りつけをしましょうとか言い出します。
そんな夢来に少し違和感を持ちながらも余島は仲間が出来たことが嬉しくてたまりません。

その時またまた謎の探偵男立が現れます、逃げ出す夢来、追う探偵、そこにまたオカマの
三田まで加わっておっかけっこになります。
その時、一人川べりで花火をしてる失恋女に夢来は助けを求めます。
夢来『変な男に追われてるの、助けて!』

失恋女『男に追われてる、うらやましい。。』と言いながらも夢来をかばって
ピストル型の花火にライターの火をかざして探偵を脅します。
花火の脅しに探偵は鼻で笑って夢来と失恋女にせまりますが、女が点火したピストル花火
から本物の弾丸が発射されます。
驚く一同

撃たれた腹を押さえながら、探偵はゆっくり死を覚悟したかのように川に入っていきます。
それを悲しげに見ている三田、花火から弾丸が出たので驚いてる、失恋女と夢来!

川の中の探偵、突然全身火だるまになって川の中に消えていきます。
大声で叫ぶ三田。。。

燃えた探偵を見て、ショックを受けた、夢来と三田は悲しみながらも、探偵のために
十字架を作り、お墓を作ります。

そして、余島との約束の河原に三田と一緒に行くのですが探偵の死にショックを受けて
夢来はもう家に帰るといい始めます。
やっと仲間が見つかったのに。。とあわてた余島は海賊式の友を送る儀式をやりだします。
その時、一陣の風が吹くとオカマの三田が探偵さんの匂いがすると騒ぎ出し、いきなり川に
飛び込んで、対岸目がけて泳ぎ始めます。
すると対岸に燃えて死んだはずの探偵が姿を現します。
夢来は生きていた探偵さんを見て、自分が騙されていた事に気づき、泣きながら罵倒します。
オカマの三田は必死に泳いでますが、ついに力尽きて川の流れに飲まれて消えてしまうのでした

誰もいなくなった河原、川からいきなり手が突き出されて、オカマの三田が湧き出るように飛び出してきて、
探偵さんの姿を探しますが、どこにもその姿が見当たらず大声で虚しく叫びます。
『おだてさーん~』
その悲しげな顔がストップモーションになって。。。
そこにラジオ体操の音楽が聞こえてきます。

河原で、嬉しそうに余島がラジオ体操をして船出の準備をしています。

夢来は船旅にそなえてスーパーで食料の買出しをしています。
そんな二人の様子がラジオ体操のテーマにあわせて描かれますが、嬉しそうな余島に対して
どことなく夢来の表情は暗く見えます。

道路わきのお地蔵さんの前に、夢来の買い出しした食料が供えられている。

田んぼの中を走る、一本の線路の上を夢来が綱渡りをするように歩いています。
足をすべらせてころんでしまう夢来。

そこに探偵がなぜかウサギ飛びをしながら現れて、夢来に対峙します。

夢来は微笑んで、線路の小石をひとつ手に取り、ゆっくり線路を叩いて、耳を線路にに
近づけます。
『こうすると、コーンって音がずーっと響いて行くの。。。山や川そして海。。。』

線路の音に耳をすましてた夢来は突然立ち上げると、

『帰えろ~』

とつぶやいて、可愛く手を振って立ち去ります。

なんとも言えない表情で見送る探偵さん
はじめて声をだします。

『夢が来るって書いてユキかぁ。。。』

夕焼けで紅く染まった河原で、余島がゴムボートで出航準備をして待ってます。
彼は夢来が来ないと悟ったのか、いきなり一人芝居で船員数名と船長を演じて
夕暮れの川から海に向かって出航していきます。
その後姿は寂しそうでもあり、嬉しそうでもあります。

月明かりでわずかに余島のボートを漕いでる顔が見れます。
彼はまだ船員と船長を一人で演じてますが、疲れてきたのかボートを漕ぎながら
寝入ってしまいます。彼の眠りに合わすかのように画面はフェードアウトしていきます。

画面が日の出と共に明るく観えてきます。
海面にゴムボートはプカプカ浮いてます。
目を覚ました余島、目の前の光景に驚いて!
『う、うみやぁ~』
と叫んで、海に落ちてしまいます。
その姿がストップモーションになって消えていきます。

スタッフ&キャストタイトルが流れると同時にある海岸の物語が映し出されます。

下校中の日本の小学生3人が海岸にできた砂山に興味深々で近づいてきます。
すると突然砂山が崩れて中から男が現れます。
驚いて逃げる少年たち

砂山から出てきた男は余島でした。
彼はよろけながらも、歩きつづけぶつぶつと呟いています。

『ここは、どこやぁ中国か??いやぁアメリカやなハハハ。。。』
おわり
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★解説と制作の裏側

高校卒業後すぐに次回作品の準備にかかります。
まずは資金確保の為にバイトを始めて、それと平行して、
シナリオを書き始めます。
その時の企画は文化祭の時に上映されて、
評判の良かった他クラスの映画のヒロイン
沖本尚子さんに主演してもらう事からスタートしました。
高校3年で転校して来て、
そのキュートさで一躍学校の人気者になった女の子です。
彼女の主演した文化祭映画はその頃めちゃくちゃ多く製作されていた8ミリ映画
不治の病で死んでいく系のメロドラマでした。
制作力だけみれば、自分達の作ってた映画の1シーン分ぐらいの労力で作られてた
のですが、完成した映画はヒロインの良さもあり、心に染みる映画になっておりました。
そんな彼女で是非一本つくろうから始まりました。
自分としてはもう映画は撮るつもりはなかったのですが、東京のコンテストの上映会で
観た手塚眞監督の『FANTASTIC★PARTY 』に触発されてもう一本だけ撮ってみたい
気持ちになったのです。

そして、卒業後に知り合った西田俊也さん
(当時は学生ですが、現在は小説家として活躍されております。『ラブ・ヒストリー』他)
と意気投合してシナリオを共同で書くことになるのですが、このシナリオがかなり難航します。
10稿ぐらいまで書いたのではなかったかと記憶してますが、
考え過ぎてわけわからん事に
なってしまってました。
とにかく、僕以外のメンバーは大学生だったので、
夏休みに撮影を開始するのですが
問題満載で撮影途中で中断する事になってしまいます。
そして、ちょいと落ち込むのですが、
映画はづくりはやっぱり楽しくなくてはいけないと
気を取り直して、楽しみながら作れる短編を急遽作る事にします。
それが
『映画屋残酷物語未来編役者地獄』
です。
この短編製作で創作パワーが復活、再び『夢来 ゆき』の撮影を始めます。

ここからがまた問題の連続。。。あまりに色々ありすぎて断片的な記憶しかありませんので
箇条書きにさせて頂きます。

●一度中断になった影響でメインキャストやスタッフで参加できなくなった人がでる。

●余島役の奥村均治さんが故郷の九州に帰り映画はもう作らないと言ってるのに1ヶ月で済みますからと頼み込んで京都の自分のアパートで共同生活しながら撮影するも結局1年ぐらい拘束してしまう。

●橋の上で撮影中に突風が吹いて三脚ごとカメラが川に転落しておじゃんになる
その日の撮影は中止になった上に新品のカメラを購入することになる。
(この事件以降、どの撮影現場でもカメラだけおきっぱなしにする事はしなくなります)

●探偵さんが炎上するシーンで役者さんにやってもらうのは危険なので、監督自身がスタントマンになり、体にアルコールをぶっかけて燃える事にする、川の中での炎上なので最悪の場合でも
川に倒れこんでしまえばなんかなると言う考えで遂行するも、点火直前に怖くなった沖本さんが
『ねぇやめようよ増井くん。。』と涙ぐんだので、自分も少し怖くなるが決行!
しかし、日暮れギリギリを狙って撮影した為に暗すぎてフィルムは使い物にならず。
思ったより、あぶなかったのと、衣装が一組しかなく燃えてしまったので、素材から合成
することにする。
その合成用の素材の炎を撮影するとき、深夜に自宅前の焼却場で綿にベンジンをぶっかけて
撮影したのですが、疲労が溜まっていてぼけていたのか、ベンジンをほぼ1本全部かけて
点火した途端5メートルぐらいの火柱が立って警察が来てしまう。
(一応お咎めなしですむが眉毛が焦げる)

●撮影の中盤でヒロインが長い休みがあった為に髪にパーマをかけてしまう、彼女にとって
生まれて初めてパーマだったのに、ストレートに戻してもらい髪を傷める事になってしまう。

●撮影がどんどん延びて、晩夏の設定のまま冬にも撮影する事になり、極寒の中、川に入ったり
するので我慢大会みたいになってしまう。
●オカマ達がもめるシーンをマンション内で撮影していたが、照明のめんどくささや、部屋の
狭さが嫌になり、芝居さえ繋がれば空間はどこでも良いのでは考え、半分のカットを草原で撮る
結果的にはこのやり方が映画のトーンを決めて、微妙なシュールな感じが出来上がる。
●東京からわざわざ手塚眞監督に来てもらって、映画青年役で出演してもらう
その時一緒に来てくださった小林弘利監督に毎日現場で口笛を吹いてると突っ込まれる
その日、その日のテーマ違うらしいが自覚はなかったです。
夜に小さなアパート部屋でやった8ミリ上映大会は楽しかった。
(手塚監督出演シーンの声は関西の名物男の森さんに吹き替えしてもらう事になる)

●今の撮影機材でやれば、そんなに大変ではないシーンなのですが、探偵さんが死んだ
後、悲しむ夢来と三田表現するために、川にかかってる橋桁の上で佇む二人の姿が
オーバーラップしながら段々近づいて来て、オーバーラップの最後に歩きながら会話する
長回しをするシーンがある撮影をやったのですが、8ミリの場合オーバーラップの処理は
撮影時にカメラ内でやって仕上がりを観るまで上手く撮れてるかわからなかったので
どこかで、芝居か撮影が失敗すれば、とりあえず最初からやり直しになってしまいます。
この橋桁を登ったり降りたりが、大変でここだけでワンテイクなのに6時間ぐらい
要してしまい、そこまで
やって最後の芝居部分でミスが出たら終わりなのですが、最後までうまくやれて
ラッシュの出来が、予想以上に良かったのが、一番印象深い思い出です。

などなど書いていたらきりがありません。
結局撮影は中断期間も含めると完成に3年もかかってしまいました。

ヒロインの夢来役の沖本さんは18才から21才と言うおしゃれしたい時期に役柄にあわせた
ぼさぼさ頭で過ごすことになったので、申し訳ない気持ちでいっぱいだったのですが
撮影最終日、今日で終わるのは寂しいと言ってくれたので救われました。

この映画で自分としては収穫が色々あり、その中の大きな事柄に、
芝居に合わせて撮り方を変えて
いくことができるようになった事です。
自分の基本の撮り方としてはカット割をして、その枠内でアドリブの芝居を取り込んでいく
やり方が中心だったのですが、余島役の奥村均治さんがカットを割っていくほど魅力が消えて
いくので、徐々に長回しで撮るようになり、最後の方はアドリブの手持ちワンカットワンシーンで
撮るようになりました。
これは自分にとっては新鮮な演出の面白さだったのですが、おかげで映画の前半と余島の
登場する後半ではまるでちがったテンポや雰囲気になってしまい、映画の感想として前半は好き
だけど後半はイマイチとかその逆も多かったりしてまとまりの無い作品になってしまったようです。
当時は映画全体のバランスを考えて演出できるほどの力量がありませんでした。

この映画は観てくださった方々の総合評価はそんなに高くなかったように思うのですが
極端に好きになってくださった方が何人もいて上映会するたびにリピーターがいたのは
嬉しかったです。
当時では珍しかった全編オリジナル音楽もすごく良かったです。

名古屋では何故か絶賛してくださる方が多くて、わざわざ自分の監督特集の上映会もやって頂い
たのは良い思いでです。

サウンドにもこだわり当時アルバイトをしていた録音スタジオを無料で使用させてもらったので
8ミリ映画としてはかなり贅沢な録音をやれました。
パルスシグナルでシンクロする録音のマスターテープを手間をかけて作ったのですが
映画が長くなったので、テープのリールが大きな物になってしまい、そのリールに対応する
デッキを上映会場で用意できないことが多かったので、外部での上映をパルス方式で
やったことは一度も無く終わってしまいました。

映画の大きなテーマとしてはリアリティのあるファンタジー映画を作ってみたいと言うのがありました。
登場人物に生っぽい人間的な部分を感じさせながら(飯も食べるしトイレも行く生活感を持たす)描くファンタジー物を作ろうと西田氏と相談して進めたのですが、試行錯誤の上で完成した映画
は前記したように全体のバランスがうまく取れてない作品になってしまいました。
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観て頂いた方の感想の中に当時『セーラー服と機関銃』が大ヒットした。
相米慎二監督のまねとか影響が強いと言う感想が多かったのですが、映画の上映までに
時間がかかってしまったので、観客の方にはわからいない事ですが、この映画を撮影してた頃
まだ相米慎二監督はデビューされてなかったので影響の受けようもなかったのです。
後日『セーラー服と機関銃』を観て、これは自分のやりたかったリアルファンタジーを
すごく上手くやれてる映画だなぁと思い、自分のその年のベストムービーになりました。
多分相米慎二監督も自分も神代辰巳監督の影響をすごく受けたと思われるので
そんな感想が多かったのかなと思っています。

多くのスタッフとキャストでスタートして3年近くかかった撮影でしたが
ロケ撮影の最終日は海に浮かぶボートのシーンでした。
この頃は完全に予算もオーバーして海のロケに行く移動費用もギリギリだったので
余島役の奥村さんと助監督の山本さんと自分と言う3人だけのロケで終了しました。
ロケの後3人ともほぼ所持金無しになったので、そのまま3人で日払いのバイトに
出かけたのも、今では良い思い出です。

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